10年越しの恋
「咲のこと全然覚えてなかったって言うのが瀬名らしいよね」
ケーキをフォークできれいに適当な大きさにして口に運びながらさやが笑う。
「もう言わないでよ… 人の名前と顔覚えるの苦手なんだもん。それに咲ちゃん痩せてなんか別人みたいになってるし」
「なんだ覚えてるんじゃない」
私の記憶の中にあった咲ちゃんはワークパンツにごっついブーツを履くボーイッシュなイメージだったのに、今目の前にいるのはMAXMARAのシンプルな黒いツインニットを着こなす大人の女性。
短かったはずの髪も長くなってサイドの髪をクリップで留めた顎のラインはとてもシャープで綺麗だ。
「あの咲ちゃんだよね?」
曖昧な記憶を確認するように尋ねると間違いないよというようにしっかりと頷いてくれた。
「思い出してくれたついでにその咲ちゃんっていうの止めない? 咲でいいから」
無意識の内に他人との距離を保つために敬語で話したり必要以上に敬称を付ける悪い癖だ。
「じゃあ咲と瀬名ってことで!」
少し緊張しながら呼び捨てで呼んでみた。
「2度目ましての自己紹介も終わったところで、今からどこ行く? どっかいいお店知ってる?」
「私はパス! 全く知らない。咲は?」
今度は自然に名前を呼べたと思う。
「同じくパス。ここはやっぱり交友関係の広いさやにお任せってことで」
そんな私たちに呆れ顔で手帳を取り出したさやは空いてるかどうか電話してみるね、と携帯を手に席を立った。
二人になると気まずくなるかと思ったが不思議に居心地がよく話が途切れることはなかった。
私達が働く会社は10分程の距離だということで盛り上がる。
もちろん短大を出て学校推薦で就職を決めた咲の会社は1流商社の子会社とはいえ名の通った所で雲泥の差だったけど、同じ事務職で話が合った。
そしてお互いに仕事の後はほぼ直帰ということが分かり来週にでも会おうという約束をした。
ケーキをフォークできれいに適当な大きさにして口に運びながらさやが笑う。
「もう言わないでよ… 人の名前と顔覚えるの苦手なんだもん。それに咲ちゃん痩せてなんか別人みたいになってるし」
「なんだ覚えてるんじゃない」
私の記憶の中にあった咲ちゃんはワークパンツにごっついブーツを履くボーイッシュなイメージだったのに、今目の前にいるのはMAXMARAのシンプルな黒いツインニットを着こなす大人の女性。
短かったはずの髪も長くなってサイドの髪をクリップで留めた顎のラインはとてもシャープで綺麗だ。
「あの咲ちゃんだよね?」
曖昧な記憶を確認するように尋ねると間違いないよというようにしっかりと頷いてくれた。
「思い出してくれたついでにその咲ちゃんっていうの止めない? 咲でいいから」
無意識の内に他人との距離を保つために敬語で話したり必要以上に敬称を付ける悪い癖だ。
「じゃあ咲と瀬名ってことで!」
少し緊張しながら呼び捨てで呼んでみた。
「2度目ましての自己紹介も終わったところで、今からどこ行く? どっかいいお店知ってる?」
「私はパス! 全く知らない。咲は?」
今度は自然に名前を呼べたと思う。
「同じくパス。ここはやっぱり交友関係の広いさやにお任せってことで」
そんな私たちに呆れ顔で手帳を取り出したさやは空いてるかどうか電話してみるね、と携帯を手に席を立った。
二人になると気まずくなるかと思ったが不思議に居心地がよく話が途切れることはなかった。
私達が働く会社は10分程の距離だということで盛り上がる。
もちろん短大を出て学校推薦で就職を決めた咲の会社は1流商社の子会社とはいえ名の通った所で雲泥の差だったけど、同じ事務職で話が合った。
そしてお互いに仕事の後はほぼ直帰ということが分かり来週にでも会おうという約束をした。