10年越しの恋
雅紀が到着するまでの1時間でさらにグラスを重ねて本当に酔っ払ったさやと咲を郊外の住宅街まで送り届ける。


「相変わらず若くて男前だよね」


「さやの彼がおっさん過ぎるんだよ」


「そうだよ! 雅紀君私にいい人紹介して」

運転席の真後ろに座ったさやと真ん中から顔を出して助手席の私に話し掛ける咲の声で賑やかな車内。

一人しらふの雅紀はそのテンションに少し困った様子を見せながらも騒ぐ子供たちをあやすように相手をしてくれた。

二人が住む街は驚くほど不便な場所で四方八方に同じような家が規則正しく並んでいる。

「忘れ物ない?」


車を止めたバス停近くの街灯に照らされ少し明るくなった後部座席に振り返って確認した。


「じゃあまたね」


「雅紀君ありがとう」

窓を開いて同じ通りにある各自の家に二人の姿が消えていくのを見送った。

車の往来も全くなく歩く人もいないその場所でUターンして幹線道路へと向かう。


「久しぶりに来たけどこの辺りもだいぶ変わったよね」

私達が大学生の頃時間を忘れて遊んで電車が無くなると嫌な顔一つせずにこうして何度も送り届けてくれた。

ゴルフ場と緑以外何も無かった場所に大型電器店やスーパー、ファミレスにコンビニ。

以前は真っ暗だったのに今ではこんな時間でもネオンに照らされて山の向こうにある街となんの遜色もないように感じる。


卒業からたった1年程の間に大きく色んな事が変わってしまったんだと思った。

たった1年、されど1年。

時の流れを感じずにはいられなかった。

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