10年越しの恋
今日はお正月休みを控えた締め日。

忙しくなることは分かっていたが久しぶりに雅紀と会う約束をしていたので早めに出社して仕事に取りかかった。

年末に際して支払いや請求書受付のスケジュールが前倒しされていたが、取引先や下請け会社には先月中に詳細をFAXしていたので滞りなく処理が進む。

この調子でいけば夕方には経理に伝票を回して定時退社も可能だと思った。

11時を過ぎると煙草を吸いたい衝動に駆られたが、午前中は集中して頑張ってお昼休みに近くのカフェでゆっくりしようと自分を奮起させる。

あと10分そう思っていると突然電話が鳴った。

経理の回線だったので気にしないまま手を動かし続けていると内線ランプが光る。

誰だよこんな昼休み直前に…。内心ぼやきながら受話器を取ると突然金田の怒鳴り声が聞こえた。


「今日振り込まれるはずのB電気工事、先月請求分の3000万が未入金になってるのはどういうことだ」


あまりに声が大きかったので受話器から耳を少し離して要件を叫び終わるのを待ち、冷静さを失った金田に落ち着いた声で告げた。


「ええ、先月分請求書頂いてませんから」


全く動揺しない私にさらに苛立ったようだ。


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