10年越しの恋
「はあぁぁぁぁ!! この振込に1つの会社の存続がかかってるんだぞ」


「お言葉ですがそんな大切な請求書を出し忘れたというのは担当営業マンであるあなたの失態、もしくはそちらの経理担当者の責任であって私に言われても困ります」


「請求書が届いていないことをなぜ俺に言わない」


興奮する金田の意味不明な要求を遮るように私は続ける。


「3か月程前にも同じようなことがあった時に私が金田さんに確認の電話をしたら、届いてない時は払わなくていいんだよって言いましたよね」


わざとフロアー中に聞こえるよう大きな声で言った。


「あの時と今回は別なんだよ」


「はぁ… 私は馬鹿なのでその違いが分かりません。分かりやすく説明していただけますか?」


金田が取引先と話し合い請求額の1部を自分のポケットマネーにするために裏で動いていることは周知の事実。

B電気工事からの不定期な請求はその裏工作の1つだったのだ。


「とにかく何でもいいから今からすぐに銀行に行け」


後ろめたく説明なんて出来るはずのない金田は大きな声で私を動かそうとする。


「お言葉ですが…」
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