10年越しの恋
家に着くともう3時を過ぎていた。

寝静まった家族を起こさないように忍び足で階段を上っていると携帯が鳴る。

静まり返った廊下に鳴り響く音に眠りこけて私が帰ってきたことにすら気づいてなかったモモが大きな声で吠え始めた。

慌てて部屋に飛び込んで携帯を手に取ると雅紀だった。


「何度も電話したんだよ。電源切ってどこ行ってたの」


まるで約束を破ってなんかないみたいにごく自然に振る舞う雅紀は私の知らない人みたいだった。


「私に聞く前に言わないといけないことがあるんじゃない?」


「寝ないで大学行って時間まで起きてようと思ったんだけどいつの間にか寝てた」


悪びれる様子もなく淡々と説明する雅紀に対して怒りや憤りというありきたりな単語では説明できない感情に苛まれる。


「寝ないで行ったってまたゲーム?」


最近毎晩の電話も掛ってくる時間がまばらで、ゲームしてたとの言い訳を繰り返していた事に対する嫌味を含めた言葉を返した。


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