10年越しの恋
「夕飯の時に就職のことで親とちょっと揉めてイライラしてたんだ」


「どうして話してくれなかったの?」


「別に問題ないって思ったから」


「なのに約束を破ったんだ。仕事の話聞いてほしかったのに…」


「本当にごめん。でもまた仕事でなんかあった?」


「もういいよ。飲んで解消した」


「誰かと飲んでたから携帯の電源切ってたんだな」


「そうだよ! まあちゃんと会えるって思って嫌なことあってもがんばって仕事したのに約束破られて…。何か文句ある?」


「俺に知られると困る相手と一緒にいたから電源切ったのか?」


「そうだよ! でもまあちゃんには怒る権利ないでしょ。どうして私だけがこんな毎日を過ごさないといけないの?」


「どういう意味だよ」


「まあちゃんのお母さんとお姉さんのせいで華ちゃん殺して夢まで奪われて。毎日あんな最低な会社で仕事して…。なのにまあちゃんは嫌なことがあったからって寝てるのってずるいよ! どうして私だけが悲しい気持ち押し殺して何もなかったみたいに仕事して生活しなきゃいけないの?」


思わず漏れ出た言葉に自分自身が一番驚いたかもしれない。

ずっと心のどこかに雅紀を許せない自分がいる。

薄々は感じていたことだけど…。

言葉にするとそれは二人にとっては致命的な傷で修復不可能に感じた。
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