10年越しの恋
画面いっぱいに広がる雅紀の気持ちを目にしたとたん耳鳴りのようなキーンという音が頭の中に響いてなんの音も聞こえなくなってしまった。

何度も何度もピンク色の背景に紺色の文字で綴られた言葉を目で追った。

雅紀の迷いや不安、そしてこれから先もずっと抱え続けることになる悲しみが溢れていて痛かった。

とても優しい文章なのに私の体温を奪って全身が氷みたいに冷たくなる。

どれだけ雅紀を傷つけていたのかを思い知った。

自分では笑っているつもりだったけど。

雅紀がどれだけ優しくしてくれてもずっと寂しくて、どこへ行っても何をしていても妊娠中のあのなんとも言えない幸せな気分を味わうことができなくて、私の心は穴の開いた風船みたいにどれだけ空気を入れてもしぼんだまま膨らまなかった。


そんな自分にイライラして喧嘩も増えた。

心に余裕がなくて些細な事が気になって八つ当たりをした。

信じようと思っても突然どうしようもない不安に襲われて雅紀を試すような言動ばかりを繰り返していた。


どうして雅紀と一緒にいるんだろう？

どうして雅紀じゃなきゃだめなんだろう？

何度も何度も考えた。


『別れた方がいいのかも』

ふとそんな考えが浮かんだ。




雅紀には読んだことを伝えることが出来なかった。

あの文章について何か言うためにはもう少し自分自身と向き合う必要があると思ったから。
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表紙・目次

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