10年越しの恋
披露宴が始まるまでの時間をシックな木製家具で統一された来賓者控え室で振舞われたシャンパンを片手に時間を過ごす。

圧倒的にまさよの会社関係者が多く、完全アウェーな雰囲気に3人で隅の方で固まっていた。


「まさよやばいぐらいに綺麗だったね」


自分のことのように頬を高揚させているゆう。


「旦那さん微妙だったけど」


こんな場所でも大きな声でマイペースなコメントを言うさやに苦笑いした。


「会場の準備ができましたのでこちらへどうぞ」


案内に従ってぞろぞろと進むたくさんの人たちの一番最後に披露宴会場へと向かった。

100人近い出席者の為に用意されたその部屋はバリ島のリゾートホテルをイメージさせるナチュラルな空間。新朗新婦が座るテーブルの後ろは全面ガラス張りで見事に手入れされた緑と真っ青な空が広がり、そこを中心にシンメトリーに綺麗に配置された真っ白なテーブルとちょうどいいバランスで飾られた花が会場を華やかにしていた。

何度披露宴会場を目にしても思うのはこの場所で主役となる花嫁が幼い頃にイメージした童話の世界が表現されているなってこと。

小さい頃に読み聞かせられて何度も空想したであろうお姫様になった自分。

ディズニーの映画に出てくるプリンセス像に重ねた夢の世界がここにはあるといつも思う。

結婚に至るまでのプロセスは各カップルそれぞれだろうけどラストに夢見るのはシンデレラの世界。

童話にその後の生活が書かれないのと同じように、長い人生の中でこの一瞬お姫様になるために女の子は頑張ってるんじゃないかなって。

プランナーと打ち合わせを重ねて自分で作ったこの空間がその後の魔法が解けたカボチャの馬車みたいな生活を支えるのだろうって思った。
< 306 / 327 >

この作品をシェア

pagetop