10年越しの恋
ウエディングドレスから現代風な打ち掛けそしてカクテルドレスへと2度目のお色直しが終わり料理もメイン。

さっきはアワビが出て、次はフィレステーキにフォアグラが乗ったプレートがサーブされている。

私の前には食べ残したお皿が山のように広がっていてさすがにさやもゆうも心配そうだった。


「瀬名落ち着いて! 大丈夫だから」


一緒に前に出て…。 二人に懇願した。


「隣にいたら落ち着ける?」



「うん」


さやが助け船を出してくれた。





「続いては大学のお友達である岩堀瀬名さんからのお祝いの言葉です」


司会者がそう言ったと同時に席を立って私をエスコートする振りをしてマイクの前に一緒に立ってくれた。


「今日ここでスピーチをする瀬名はまさよの大親友で…。楽しい学生生活を過ごした代表として話します」


さやが機転を利かせて先に話し始めてくれて、握りしめていた原稿をゆっくりと読むことができた。

本日はご結婚おめでとうございます。

……

最後にまさよさん、まさよは強そうに見えて本当はすごく繊細で人の痛みを自分の痛みに感じる人です。

だから旦那さまとなった哲郎さん、その優しさに甘え過ぎないでください。

自分が悲しくても笑ってみせるまさよの気持ちを一歩先に気づいてあげてくださいね。

二人の幸せを祈っています。

最後はもう涙で言葉にならなかった。

目の前でまさよが頷きながら聞いてくれているのが視界に入っていたのは最初のおめでとうだけで後は真っ白になってしまい覚えていない。

泣きじゃくる私をさやが化粧室に連れて行ってくれた。


「瀬名の結婚式では私が泣けるスピーチするからさ」


大きなさやの手が精いっぱいにセットした髪に触れる。


「泣きやんだらメイク直してあげるからね」


そう言いながらギュッと抱きしめてくれた。


「さや、ありがとう」


寂しくて、悔しくて、悲しくて。

全然嬉しい気持ちになれない嫉妬だらけの気持ちが少しだけ暖かくなった。

さやがお嫁に行く日には本当に笑って祝える自分になれますようにって祈った。
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