10年越しの恋
3時間にも及んだ披露宴が終わった。まさよは人生の一大イベントを無事に終えホッとした表情で列席者を見送っている。目の前に来るとありがとうって涙ぐむその顔にまた胸が締め付けられて、おめでとうと伝えるのが精一杯だった。

これで続けざまに招待された結婚式ラッシュも一段落する。

緊張と華やいだ雰囲気に飲まれるように張りつめていた気持ちが悲鳴をあげていた。

ロビーはお酒で上気したおじさんたちの騒がしい声と、友達の幸せにテンションの上がった友人や同僚の大きな声が響く。

そんな中、今日もゆうとさやは同じテーブルにいた新郎の友人たちとアドレス交換をしている。

友人の幸せを祝いながら気持の奥底ではその笑顔に嫉妬し、素直に喜べない自分から目を逸らしたくてこの場から少しでも早く去りたいのが本音だった。

だからそんな輪の中に入ることも出来ずただ遠目に眺めることしかできなかった。

マナーモードにしていた携帯を見ると着信を知らせるランプが光っている。

メールを開くと駐車場にいます。と雅紀からのメールだった。

楽しそうな二人をそのままに夢の国の門を抜けて現実へと戻る。

青空が夕暮れを告げるかのように赤く染まり、高台から見下ろす景色が何故か切ない。

綺麗なブルーの紙袋に入った引き出物が重くて引きずるようにして歩いた。

広い駐車場の向こうにシルバーの車が見えた。雅紀の車だとすぐに分かる。

その場に立ち止まりその車を眺めていた。

車体はずいぶん古く強い西日に照らされてもう綺麗に光を反射しない。

まるで賞味期限が切れてしまった私達みたいだなって思ったんだ。


「お疲れ様。スピーチ上手く出来た?」


いつの間にか手に持っていた荷物を手に取って雅紀が助手席のドアを開けてくれている。


今日最後の太陽の強い光を後ろから浴びて目の前に立つ雅紀がかっこよく見えたのはどうしてかな?


「まさよ綺麗だったよ、とっても幸せそうだった」


溢れて来る涙を堪えることも出来ず雅紀に抱えられるように車に乗り込んだ。

< 309 / 327 >

この作品をシェア

pagetop