10年越しの恋
3月 とうとう雅紀が大学を卒業する。

この4年間で一緒に学生生活を送ることが出来たのはたった1年間だったけど、私にとっても思いで深いものになったと思う。

式には雅紀一家が総出で出席するというので私は行かないことに決めていた。


「卒業式の後みんなでご飯行くんだけど瀬名もどうかって、親父が」


「遠慮しておく。またいろいろ大変そうだし」


「でもいいきっかけになると思うんだ。結婚するなら尚更このまま避け続けるのは不可能な話だし、勇気を出して会ってくれないかな?」


ずっとこの2年間向き合うことを避けてきた。

雅紀が言うように結婚するならきちんと互いの気持ちにあるしこりを取り去らないと前には進めない。

でも怖かった。これ以上の痛みに私は堪えることができるのかって・・・。

向き合うことを避けてきたからこそ感じる今の不安、これを乗り越えないと未来はないんだって思う自分がいる。

まだ自分の両親とも話し合えていない。

もう逃げることは許されないんだって、心を決めた。


雅紀の卒業式までにまずは自分の両親と話し合うこと。

大きな課題が課せられた。
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