10年越しの恋
雅紀と待ち合わせた正門前はあり得ないほどの人で溢れ返っていて前も後ろも人の頭しか見えない。
桜並木の間を下って来る人の波に目を凝らしているとアイスグレーのスーツ姿が目に止まった。
大きな荷物を手に間を縫うように歩いて来る。
「まあちゃん」
「こんな人ごみの中よく分かったね」
どんな人ごみの中でもその姿は特別で、絶対に見間違えない自信があった。
「卒業おめでとう」
3年前の同じ日に雅紀からもらった同じ花を差し出す。
「ピンクのチューリップ」
微笑む雅紀と繋いだ手は暖かくって少しだけ湿っていてこの世に生きている人間そのものだった。
見慣れた景色の中で大好きな大きな手を握っていると何も怖いものなんかないって思えるぐらい安心できたんだ。
だからきっとこの後に雅紀の家族に会わないといけないって言う不安も感じなかったんだね。
「待ち合わせ場所は?」
「タクシーでワンメーターだって聞いてるけどまだ少し時間があるから歩かない?」
春の麗らかな日差しが私達の進む道を照らし、手を取り合って歩を進める二人を後押ししてくれてるように感じられた。
「まあちゃん、がんばろうね」
「おう! これからだもんな」
坂を下り進むごとに遠くなる喧噪を背中に私たちは強く強く手を握り直して前に進んだ。
桜並木の間を下って来る人の波に目を凝らしているとアイスグレーのスーツ姿が目に止まった。
大きな荷物を手に間を縫うように歩いて来る。
「まあちゃん」
「こんな人ごみの中よく分かったね」
どんな人ごみの中でもその姿は特別で、絶対に見間違えない自信があった。
「卒業おめでとう」
3年前の同じ日に雅紀からもらった同じ花を差し出す。
「ピンクのチューリップ」
微笑む雅紀と繋いだ手は暖かくって少しだけ湿っていてこの世に生きている人間そのものだった。
見慣れた景色の中で大好きな大きな手を握っていると何も怖いものなんかないって思えるぐらい安心できたんだ。
だからきっとこの後に雅紀の家族に会わないといけないって言う不安も感じなかったんだね。
「待ち合わせ場所は?」
「タクシーでワンメーターだって聞いてるけどまだ少し時間があるから歩かない?」
春の麗らかな日差しが私達の進む道を照らし、手を取り合って歩を進める二人を後押ししてくれてるように感じられた。
「まあちゃん、がんばろうね」
「おう! これからだもんな」
坂を下り進むごとに遠くなる喧噪を背中に私たちは強く強く手を握り直して前に進んだ。