10年越しの恋
真っ白な瀟洒な邸宅が待ち合わせ場所だった。
リッツカールトンにある「香桃」みたいに当たり前にメジャーなレストランではなく、この場所に住むいわゆるセレブな人たちが個人的に支持する隠れ家的中華の名店。
いわゆるヨーロッパやアメリカの一軒家にありがちなガラスがはめ込まれた少し重めのドアを開くと20畳ほどのリビングを思わせる空間に3つばかりの回転テーブルを備えたダイニングが現れる。
毛足の長いジュータンが敷き詰められたそこはいつもなら軽快な足音を鳴らすヒールをも飲み込んでしまい足音すらしない。
一番奥の一番広いテーブルに雅紀の家族が、あの日のように座っていた。
その姿に緊張してまた過呼吸に襲われるかもって思ったけれど、それは取り越し苦労に終わった。
何故か全く苦しくも悲しくもなかったんだ。
雅紀のおじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そしてさえちゃんがいる。
全員でビールを手に乾杯をした。
「雅紀、卒業おめでとう。そしてこれから社会人として頑張るように」
そんなお父さんの激励で食事会が始まった。
天盛りにして見せるのではなく、大皿の中で人数分綺麗に区分けされた盛りつけのお陰で遠慮をする必要がなかった。
そんな中唯一私を落ち着かせなくさせていたのは、見たこともないぐらい落ち着きのないさえちゃんの存在だった。
身に付けているものは相変わらず遠目に見ても上質な素材でできた有名ブランドの洋服で、
完璧なメークと、完璧な巻き髪に隙がないのも変わりがない。私から見れば自分の欠点を知り尽くした上で攻めどころがないぐらいに作りこまれたお城の持ち主みたい、なのにどこか少女のような心もとない感じが漂っていた。
テーブルに並ぶのは一見すると町の中華料理店でも常連組のメニュー。なのに酢豚やエビチリ一つをとっても黒酢が20年物だったり、エビが国内最上級と言われている天草産の車エビだったりその違いを歴然と感じさせるものだった。
私はと言えば、極度の緊張がない分愛想笑いするつもりもなくてただ美味しい食事を前に雅紀と楽しく笑い合っていた。
自己防衛本能が働いていたと言えばそんな風に聞こえるけれど、もう周りはどうでもいいやって思っていたのかもしれない。
リッツカールトンにある「香桃」みたいに当たり前にメジャーなレストランではなく、この場所に住むいわゆるセレブな人たちが個人的に支持する隠れ家的中華の名店。
いわゆるヨーロッパやアメリカの一軒家にありがちなガラスがはめ込まれた少し重めのドアを開くと20畳ほどのリビングを思わせる空間に3つばかりの回転テーブルを備えたダイニングが現れる。
毛足の長いジュータンが敷き詰められたそこはいつもなら軽快な足音を鳴らすヒールをも飲み込んでしまい足音すらしない。
一番奥の一番広いテーブルに雅紀の家族が、あの日のように座っていた。
その姿に緊張してまた過呼吸に襲われるかもって思ったけれど、それは取り越し苦労に終わった。
何故か全く苦しくも悲しくもなかったんだ。
雅紀のおじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そしてさえちゃんがいる。
全員でビールを手に乾杯をした。
「雅紀、卒業おめでとう。そしてこれから社会人として頑張るように」
そんなお父さんの激励で食事会が始まった。
天盛りにして見せるのではなく、大皿の中で人数分綺麗に区分けされた盛りつけのお陰で遠慮をする必要がなかった。
そんな中唯一私を落ち着かせなくさせていたのは、見たこともないぐらい落ち着きのないさえちゃんの存在だった。
身に付けているものは相変わらず遠目に見ても上質な素材でできた有名ブランドの洋服で、
完璧なメークと、完璧な巻き髪に隙がないのも変わりがない。私から見れば自分の欠点を知り尽くした上で攻めどころがないぐらいに作りこまれたお城の持ち主みたい、なのにどこか少女のような心もとない感じが漂っていた。
テーブルに並ぶのは一見すると町の中華料理店でも常連組のメニュー。なのに酢豚やエビチリ一つをとっても黒酢が20年物だったり、エビが国内最上級と言われている天草産の車エビだったりその違いを歴然と感じさせるものだった。
私はと言えば、極度の緊張がない分愛想笑いするつもりもなくてただ美味しい食事を前に雅紀と楽しく笑い合っていた。
自己防衛本能が働いていたと言えばそんな風に聞こえるけれど、もう周りはどうでもいいやって思っていたのかもしれない。