10年越しの恋
太陽が一般的な朝を告げる場所に落ち着いた頃、目の前の海岸にはサーフボードを手にした人が続々と集まって来て、そのまま板を透明な袋に持ちかえて砂浜を右往左往していた。


私達が座る堤防に近づいてきた一人の男の人に声を掛けると、今日はここで大会するからその前にボランティアでごみ拾いをしているとのことだった。

私たちはこれと言って目的もなく、ただ大好きな海を眺めるためだけにここに座っていたから手伝うことにした。

夏の初めなのにもう花火の残骸がたくさんあったり、ペットボトルや吸いがら、ありとあらゆるゴミが集まってくる。

自分たちはごみを持ち帰り、吸いがらも持参した大きなアルミ製の灰皿に入れているからと意識していなかったが、目的を持って眺めてみると綺麗なはずの海岸はとても汚れていた。


「いつもこんな活動をされているんですか?」


雅紀が何気なく問いかけると、その男の人は何気なく教えてくれた。


「今どんどんサーフポイントって言われる場所が無くなってきてて、お二人は海が好きなんですか?」


『はい! 大好きです』


声を揃えて答えたら、日焼けした鼻の頭にくしゃって皺をよせて「じゃあ今日大会の後、初心者講習会やるからぜひ参加してみて。そうすれば俺らが海を大切にする気持ちがわかるから」って言ったんだ。


「海に入る用意、水着すら持ってないんです」


私がそう言ってもなんとかなるからってその人は去って行った。


この時はまだ潮の満ち引きが暦によって違うことや、波の高さが風に影響されること、場所や時間がとても重要だってことを知らなくって、ただ目の前で繰り広げられるいわゆるサーフィンを見ていたんだ。

波が遠目には小さく見えて、DVDなんかでも見かけるハワイでのサーフシーンには程遠いものだったけど、でもその各人が海の上に立ち上がるその姿は圧巻で迫力があった。
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