10年越しの恋
足に触れる水はとても冷たくって、たくさんの砂を含んでいて重かったけど板を海に投げ出して両手が自由になると次第に心地いいものになった。

砂浜で教えられたとおりに板の上に腹ばいになってクロールの要領でパドリングをすると面白いように海面を進む。

視線が水平線と平行になっている分浮き輪をして浮かんでいる時よりもずっと海が波が太陽の光さえも近いものに感じられた。

再び潮が満ち始めると共に凪いだ海が波打ち始める。

頃合いを見計らってインストラクターが私たちをいくつかのグループに分けてポイントへと連れ出してくれた。

小さな波もこうして実際目の前にするととても大きなものに感じる。

岸から見ていた時はあんなに物足りなく感じたのに。


「じゃあ次瀬名さん行きますよ」


板にまたがってぷかぷか浮いてたら声が掛った。


初めてで上手くコントロールできないからタイミングを見計らって押し出してくれるとのこと。

板の上で教えてもらったポーズで待つことになった。

波がやってくる方向に背を向けて浮かんでいるというのが少しおかしな気分で、少し怖い感じがして何度も後ろを振り返りながらその時を待つ。


「さぁ、行きますよ。いいのが来ました。少し大きいですがとりあえず教えた通りとにかく立ち上がって下さい」


「はい!」


「行きますよ!!!」


「はいぃい!!」
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