10年越しの恋
涙が出そうになった。さやの優しさが胸に染みて泣きそうになった。でも今日はさやのお祝いをするんだ。そう思い私は、改めてジョッキを持ち上げて

「すみませーん ビール おかわり」

「さやー とことん今夜はいくよ。なんてったて大好きなさやの誕生日だからね」

明るい声ではしゃいだ。

この夜も?おもいっきり飲んで、たくさん語って、騒いだ。

いつもと違ったのは、普段なら話さないことまで酔いにまかせて話したことかも。

閉店です。もうそんな時間なんだ! ぞくぞくと帰り支度を急ぐ周囲のざわめきに我に返って、終電に間に合うよう駅へと急いだ。


「じゃあまたメールするね。まあもうすぐ新学期だから、またずっと一緒だけど」

「うん またメールするよ、おやすみ。今日は楽しい誕生日をありがと」

酔っ払い以外の何者でもないのだけど、二人でおもいっきり手を振りながら大きな声で改札をはさんで会話を交わす。

そうやって私たちは家路へと向かった。

帰りの電車内

♪ブーン♪

膝に乗せた小さなバックの中でマナーに設定されている携帯が呼び出しを知らせる。

「もっしも~し」 雅紀からだ!
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