10年越しの恋
「じゃあ、また新学期にな」

そういって手を振るケンと別れた私は、正門へと向かって坂を下っていた。

♪プルルルル♪

「もっしも~し さや?」

「瀬名?説明会終わった?」

「うん、今終わったところ。かなりだるかったよ」

「今ね、まさよといつものカフェにいるよ、来ない?」

「え~ そうなの? なんで~ ほんとに? 今正門前だから10分で行く」

「OK ではでは 待ってるよ~」


急いで待ち合わせの場所へと向かった。

港町にある大学の周りには美味しいケーキを出すカフェが数多く点在している。

そんな中で私たちのお気に入りは海が見える、大学の裏山。その中腹にあるカフェだった。

「さや~ まさよ~」

お気に入りのソファー席でくつろぐ二人を見つけて小走りで駆け寄った。

「お疲れさま。どうだった? 説明会」

「なんかもう話ばっかり長くって。あっ、でもケンに会ったよ」

「そうなんだ~ なんかケンって瀬名に妙に優しいよね? そう思わないまさよ?」

「そうかもね~ わかんない。瀬名アイスティーでいいよね? あっ すいませ~ん。いつものもう一つ」

「もうまさよ~。なんで? 恋愛に興味ないの? かわいいのにもったいないよね~」

そう、まさよはかわいいくって、いい感じのスタイルなのに彼氏いない歴20年・・・・。
私たちの心配の種の一つだった。

「いいんだって。そのうちね。二人がうらやむような恋愛する予定だから」

そうやって笑うまさよにつられて笑った。
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