10年越しの恋

祈り

送ってもらったおかげで早めに着いた私は、予備校近くのファーストフード店で雅紀を待っていた。

「瀬名~ 久しぶり!」

「久しぶり? 今日も勉強がんばった?」

「微妙…」

そういいながらコーヒーを片手に私の前に座った。

「久しぶりって言っても1週間会ってないだけだよ。毎日電話で話してるし」

「1週間も会えなかったんだよ。もう俺なんか勉強が手につかなくって」

「あ~ またそうやって言い訳する。ちゃんと勉強してるの? 2月なんてあっという間だよ」

「分かってるって。今日は久しぶりのデートなんだから固い話は無しにして。どこ行く?」

うれしそうな笑顔の雅紀の笑顔にお説教する気も失せる。

「う~ん、どこでもいいよ」

「じゃあさ、あのステーキ屋さんは? 瀬名が大好きなサラダ食べ放題の」

「いいね~。そうしよっか」

たわいない話をしながら残っていた飲み物を飲み終え、店を出た。


差し出される左手、私たちは手をつなぎ歩く。

いつも雅紀は車道側を歩いた。私を守るように。

< 58 / 327 >

この作品をシェア

pagetop