10年越しの恋
「じゃあ、また大学でね」

そう言って見送る私に少し心細そうな、でもふっきれたすっきりとした顔のまさよは手を振り、浩一の後を追って小走りで店を出ていった。

「瀬名、俺らも行こっか。瀬名~」

「えっ? あ、うん」放心状態だった。

地下街から外に出た。ひんやりとした秋の風が気持ちいい。

「まさよが浩一を好きだなんて全然知らなかったし、考えてもみなかった。鈍感なのかな…。まさよ辛かったんだろうな……。傷つけてたよね」

「でもさ恋愛なんてそんなもんなんじゃないのかな? 上手く言えないけど、好きになった相手も自分のことを好きになってくれる。思いが通じるってのはある意味奇跡というか…。なんかそんな風に俺は思うからさ」

ロマンチストなんだね。そう言って茶化してみる。

「せっかく人が真剣に話してんのに!」

「ごめん。でもまあちゃんの言う通りかも。思いを伝えるために、自分の方を向いてもらうために。気持ちが強ければ強いほどがんばれるんだよね」

「でも思いが強くなりすぎて、まさよちゃんの場合は周りが見えなくなった」

「うん。でも私ね、そんなまさよがかっこいいって思った。そこまで誰かのことを好きになれるってすごいなって」

瀬名は俺のことそれぐらい好きじゃないの?
わざと悲しそうな顔をしてみせる雅紀。

「も~ 今はまさよの話でしょ!」

照れる私を見て爆笑する。

「これでよかったんだよね。間違ってないよね」

「うん、間違ってない!」

そう私を安心させるように言うと、雅紀は私の手を強く握り直した。

どんな人ごみの中でもはぐれないように。

信号が青に変わる。

混雑する横断歩道を私たちは前へと進んだ
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