10年越しの恋
真っ暗な冬の夕暮れの時刻。冷たい風に体を縮めながら、駅へと向かう。

雅紀からの連絡はない。

どうしたんだろう?だめだったのかな……。

不安に揺れ動く気持ちを抱えながら早足で坂を下った。

待ち合わせのビルの前。まだ雅紀の姿はない。

どうしたんだろう…。

メールをチェックしてみるが来ていない。もう待ち合わせの時間を20分ほど過ぎている。氷のように冷たくなった手をこすりあわせながら周りを見渡していると、走ってくる人影、雅紀だ。

「ごめん!」本当に申し訳なさそうに手を顔の前で合した。

「心配してたんだよー。全然連絡ないし」

「ほんとごめん、寒かったでしょ。とにかくどっかお店入ろう」

つないだ私の手の冷たさに、待たせてごめん。そうつぶやいた。

紅茶の入ったカップで冷え切った手を暖める。
正面に座った雅紀が話し出すのを待っていた。


「やっぱりダメだった…。すべり止め全部受かったから行けるかなってちょっと思ったりしたんだけど」

「そっか…。でもお疲れ様でした。12回も試験疲れたよね」

そう言ったきり何と言えばいいのかわからなくなって言葉に詰まる。

「瀬名、俺さ…」

そういうとゆっくりと自分の気持ちと向き合うように話し始めた。
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