10年越しの恋
=夏=

真っ青な空に太陽が力強く輝く。大好きな夏がやって来た。

受験生なのにストレス解消! と教習所に通い免許をとった雅紀。

勉強の合間をぬって、今日はその運転で初めてデート。家の近くまで迎えに来るという雅紀をドキドキしながら待った。

♪プルルルル♪ 携帯が鳴る。

「お待たせ、今瀬名んちの近く。公園の前だよ」

はじめてのドライブデートにうれしそうに弾む声。

「了解! すぐに行くね。どんな車?」

「親父の乗ってた古いやつなんだけど、シルバーの」

そう言いかけた雅紀に分った! とりあえず行く。
そう答え、走ってその場所へと向かった。

公園の前。夜10時を回ったあたりは暗く車体の色も見分けづらい。

そんな中、静寂を破る軽いクラクションの音。

「瀬名、こっち!」開いた窓から身を乗り出す姿が見えた。

乗り込んだ車内。心地いい音量で流れる音楽。

「ここまで電車だと1時間半もかかるのに、車だと近かったよ」

「そうなの? でも心配したんだよ。初心者くんだし」

大丈夫だって!!! 自信いっぱいに

「シートベルトはOK? では出発進行」

ギアをドライブに入れ、サイドブレーキを落とした。

窓から眺める景色。繁華街の明かりがまぶしいくらいにきらめく。

「きれいだね、いつも見てる景色なのに」

ぼーっとする私に言った。

「もっと素敵な場所にお連れします」
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