10年越しの恋
5月になり本格的に授業が始まった。

今日は午後から授業へ行けばいい予定。
大学の裏山。いつものカフェでランチをした。


「瀬名、時間割どうなった?」


「なんかさサボりすぎた結果、4年生にしては結構な数の授業が… 二人は?」


「私も結構保険掛けたから授業数多いかも。でも英文は出席取らないのが多いから、たぶん楽勝」


就活のためリクルートスーツを着たまさよはそんな二人の会話を羨ましそうに聞いていた。


「私なんて単位やばいのに就活で学校あんまり来れないし…」


さやは、社員として採用されなくても今の編集社でバイトを続けるつもりでいたし、私は大学院への進学を考えていた。


「大丈夫だよ。まさよなら」

そんなのんきな私たちにあきれ顔だ。
 

「今、就職超氷河期なんだよ! 分かってないんだから」

そんなまさよの様子に4年生になったことを実感する。

楽しい学生生活もあと少しか…。そんなことをぼんやりと考えた。


「もう、二人ともそんなしけた顔してないで。今を楽しまないとね! それに瀬名はやっと雅紀君との夢のキャンパスライフが始まったんだから」

古臭い言い回しに飲みかけたアイスティーを吹き出しそうになった。


「キャンパスライフって!! 何時代? でもそうだよね、あと少し楽しまないと」

そのままたくさんのくだらない会話を楽しんだ。

ふと時計を見たまさよの「やばい、遅れるよ! 4限」の声に慌てて坂をくだった。
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