10年越しの恋
待ち合わせの居酒屋はたくさんの楽しそうな声が騒がしく響く。

3人は奥の座敷席にいた。
頭1つ飛び出たさやがいい目印になっている。
もう楽しそうに飲み始めている様子だ。
緊張で固まる西田君の背中を両手で押すようにしてテーブルへと向かう。


「なに? 俺の入学祝いじゃないの? みんなもう飲んでるし」


雅紀の声に遅れた3人が合流した。


「まあいいじゃない。座って」


新しいビールが運ばれたところでさやが音頭をとった。


「では改めて、雅紀君、西田君入学おめでとう!! 乾杯」


ゆうは仕事帰り。学生時代から少し大人の雰囲気に変わっている。
リクルートスーツが板についてきたまさよ。
相変わらずテンションの高いさや。久しぶりに揃った顔ぶれに楽しくなる。

次々と運ばれ料理やお酒をあっという間に平らげていった。


「西田君、もっとなんか食べる? 飲む? 」


お酒に弱いゆうが真っ赤に火照った顔で絡んでいる。


「ありがとうございます! ゆうさんって優しいんですね。なんか、いいです」

はにかむゆう。

普段はガードが固いのに、今日はまさに女の子になっている姿になんとなく幼馴染としての勘?
がんばれ! そう思った。

そんな二人を尻目に就活の愚痴を繰り広げるまさよと、それをなだめるさや。
そんな姿もなんだか久しぶりで楽しかった。

雅紀の入学式の後の食事会の話も、よくがんばったねって二人が頭をなでてくれた。


『雅紀君、ちゃんと瀬名を守るんだよ』


酔っ払った二人の言葉に真剣にうなずく雅紀の姿もうれしかった。

いつまでもこうしてみんなでたくさんのことを話せるといいなって思った。
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