10年越しの恋
「ゆうさん、家まで送ります」よほど楽しかったのだろう。そんな西田君にさやとまさよも駅まで連れて行ってくれるようにお願いした。

「二人の邪魔なんてできないよぉ、ねぇ、まさよ」

「そうだよー 私たちは大丈夫!」
手をつなぎやばい足取りで歩き始めた後ろを西田君とゆうが追いかけるようにして帰って行く。


「よろしくね」そう声を掛けると、後ろ手に手を振った。

酔ってとろんとした目になっている雅紀。
あまりお酒が強くないのに私たちのペースに巻き込まれて飲み続けていたんだろう。
車を置いてある会社で休んでから帰るというので、そこまで送ってからタクシーで帰ろうと思っていた。


「まあちゃん~? 大丈夫ですか?」声を掛けると、


「うん、大丈夫」そのまま手をつなぐ。


なんで瀬名はみんなの前では俺のこと雅紀って呼ぶの? 楽しそうに話し続ける雅紀を引っ張るように歩いた。

お酒でふわふわした感じが気持ちいい。
ぼーっと進んでいると、知らない景色が広がっていることに気づいた。


「この道で合ってる?」


「どうかな~。わかんない。もういいじゃん。今日はお泊り!」


「もう! 何言ってんの、この酔っ払い!」


「照れない、照れない」

そんな雅紀に逆に引っ張られるように少し後ろを歩き、いわゆるホテルへと入った。

ソファの上。後ろから私を包み込むよう両手を回し座る。軽く体を預けるようにするとふんわり香水と煙草の混ざった匂いがする。雅紀の匂い。


「瀬名ってもう3年ぐらい付き合ってるのに恥ずかしがるよね」


「そおかなぁ~ そんなことないよ…」
照れ隠しに雅紀の太い指の関節を触りながら俯く。


「そんな年上らしくない姿も好きなんだけどさ」

くるっと私を自分の方に向かせると、そっとキスをした。

目を覚ますとまだ真っ暗だった。枕もとで光るデジタル表示の時計を確認するとAM3:00を示している。

腕枕をしたまま優しく私を抱きしめ眠っている雅紀を起こさないように体を起こそうとすると、瀬名? どこ行くの? 寝ぼけた声が聞こえる。
どこも行かないよ、そう言って雅紀の髪を撫でた。

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