10年越しの恋
集合場所には同じホームステイプログラムに参加する人がすでに集まり始めている。

添乗員にチケットをもらいチェックインを済まし、まだ時間があるというので雅紀とカフェテリアでお茶をすることにした。

「昨日寝てないからすでに眠くて仕方ないよ…」

「飛行機の中でよく眠れていいんじゃない?」

「まあね~」

「ロスまでって何時間ぐらいかかるの?」

「たぶん8時間ぐらいかな?」

「けっこう長いね。俺、海外って行ったことないからその感覚よくわかんないけど」

「もうね~ 着くころには体バキバキに凝ってるよ」

「だろうね。あんな狭い席にずっとだもんね」

「小さい私でもかなり辛いよ」

そう言ったきり微妙に途切れた会話。

やっぱり少し怒ってるのかな? 不安な気持ちになる。

前に座る雅紀に目をやるとごそごそとカバンの中からきれいなブルーの封筒を取り出すところだった。

「瀬名、これ飛行機の中で読んで」

不思議そうな顔で受け取る私に照れくさそうな表情を浮かべる。

「いいから! 機内で読んで」

「うん、わかった。ありがとう」

大切にバックの中に入れた。

出発時刻。ゲートの前へ向かう。

「そろそろ時間だね。結構並んでるみたいだし」

「そうだね…」

永遠の別れでもないのに…。寂しさを感じるのはなぜだろう? つないだ手を放したくなくなる。

人目につきにくいフロアーの陰でキスをした。
ゆっくりとハグを交わした後、搭乗口へと向かう行列の前でつないだ手を離す。

「じゃあ、気をつけていってらっしゃい」

「うん、行ってきます」

「向こうで青い眼の外人と浮気すんなよ」

そう言った雅紀の妙にまじめな表情を崩す為に、精一杯の笑顔で答えた。

「するわけないでしょ。大好きだからね!」
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