牛乳と猫スーツ。
「直樹くん、止まれ!」
直樹はビクッと震えながらも、その場で止まる。
「足元を見てみるんだ。」
菫が指差す先を見ると、先ほどと同じ糸が、ちょうど足首に当たる位置に張られていた。
「さっきのは囮(おとり)、こっちが本命か。」
菫は糸をまたいで通りながら言う。
「さすがですね、菫さ―――――」
「キャッ!?」
直樹が振り返ると、菫が細い糸で体を縛られて天井に吊られるようにぶら下がっていた。
「どうやら、それもダミーだったようだ。」
「はぁ…。」
直樹は菫をじっと見ていた。
「胸が強調される縛り方だからといって、そんなに見つめないでくれ直樹くん。私にも羞恥心はあるぞ…。」
「いえ、そうじゃなくて。さっきの『キャッ!?』って小さな悲鳴は菫さんですか?」
「………………。」
しばらく沈黙が続いた。
「な、何を言っているんだ直樹くん!私が悲鳴を上げるわけがないだろう?」
「でも俺達2人しかいませんよね。」
「いや……その…。」
「俺はただ、可愛かったなと思っただけなんですよ。」
直樹の言葉に菫は顔を真っ赤にした。