牛乳と猫スーツ。
「と、とりあえず糸を切ってはくれないか…。」
「はい、すぐに切りますよ。」
直樹が糸に手を伸ばそうとしたとき、天井から伸びていた糸が切れ、菫が引きずられるように後ろへ引っ張られる。
「菫さん!」
「くっ!?拘束ではなく捕獲が目当てか!追ってくるな直樹くん、罠の可能性がある!」
「そんなこと言ったって!」
必死に走っていく直樹。だが、端にある階段で菫を見失った。
「クソッ。見失った…。」
とりあえず直樹は階段を上がってみることにした。
【4階】
「プップー!ブーン!」
4階に上がった直樹が目にしたのは、『鯱(シャチ)』と書かれたブカブカのTシャツを着て、車の玩具で遊ぶ長い銀髪の女の子だった。
「この海の生き物の漢字Tシャツは彩華さんの…。」
「ん?」
女の子が目をパチパチとまばたきしながら直樹を見る。
「おにちゃはだぁれ?」
「俺?直樹だけど…。彩華さんだよね?」
「うん!あやかはあやかだよ〜。」
にっこりと笑いながら言う。
「(この小ささ、眩しいくらい曇りのない瞳、無邪気な笑顔…。こ、これは………かわいいんじゃないだろうか!!)」
心の中で、直樹は親指を立てる。
「なおきはなにをしてるの?」
「君を捜してたんだよ。」
「どうして?」
首を傾げる彩華。