牛乳と猫スーツ。
「いや、勇華さんに踵落としした人に言われたくないんですが…。」
蹴りが当たった顔を撫でながら、直樹は立ち上がる。もし、元の蓮の蹴りなら直樹の顔にモザイクがかかっていただろう。
「おねちゃ!あやかね、なおきとけっこんするの!」
ガ――――――――――――ン
先ほどの遥と同じような顔をする蓮。
「却下。認めません。」
「やだぁ〜!けっこんするの!」
蓮の腕から逃げ、スーパーでほしい物をねだる子供のように、彩華は寝転がってジタバタと駄々をこねる。
「ダメ!あんな変態はダメ!!」
「いやだぁ〜〜!!」
さらに暴れる彩華を落ち着かせようと蓮が近付くが、超高速で動かす手足が蓮の体に数発当たる。
「……………。」
蓮は殺意を込めた目で直樹を睨みつける。
「(あの蓮さんが彩華さんに押されてる…。なんか新鮮だ。)」
直樹はクスッと思わず笑ってしまう。
「彩華、あいつ殺すの手伝ってくれたら認めてあげるよ。」
「ほんとう!?あやか、なおきころす〜!」
幸せな顔をして彩華は飛び跳ねる。
「ちょ、ちょっと!騙されちゃダメだよ彩華さん!俺死んだら結婚できないよ!!」
「そうなの?」
「そうだよ!だから止めてくれ!!」
幼女に必死に頼み込む高校生がそこにいた。
「おねちゃ〜!!」
彩華が蓮に怒った顔で迫る。
「チッ。」
彩華に体を揺らされながら、ダルそうに舌打ちする蓮。
「(うわ〜。マジの舌打ちだ。そういえば、出会った当初の蓮さんもこんな感じだったな。)」