牛乳と猫スーツ。
16…留学生はお姫様。
これは魔法ステッキ事件から数日後の話である。
午前6時30分。空港に大きめの麦わら帽子を被り、白いワンピース姿で、髪は肩より少し長めのウェーブがかかった金髪、エメラルドのような瞳を持った外国の女の子がキャリーバッグをコロコロと引きながら歩いていた。
「ヨテイより早くキタから、レンの驚く姿が想像できるネ。」
………………………。
………………。
………。
午前7時56分。
生徒会室には蓮が操作するパソコンの音が響く。今日は何もすることなく、直樹は夏休みの宿題をしているところだ。
「おはよう。蓮、直樹くん。」
菫がドアを開けて入ってくる。
「菫か。茶を持ってこよう。」
椅子から立って蓮がお茶を取りに行く。
「すまないな、蓮。おや?直樹くんは勉強かい?」
菫が向かいの椅子に座り、ノートを覗き込んでくる。
「宿題ですよ。やらないと、こーちゃん先生や会長に怒られますからね。」
「補習ギリギリだったそうだな。夏休み明けにはテストがあるし、その次は実力テストだ。今のうちに勉強しないとな。」
夏休みが終わった後にはテストが2つ待っている。休みの間に勉強しないとマズいのだが、直樹は勉強は嫌いな方である。
不意にパソコンから「メールが届きました。」という電子音が聞こえた。
蓮がお茶とお茶請けを持ってきたので、メールがきたことを伝えると。
「メールがくるはずは無いんだが。」
呟きながら会長席に座り、メールを確認する。
「どうやら仕事だな…。この夏はしないんだが、しょうがない。」
パソコンの電源を切り、バイクの鍵を持って出掛ける準備をする。