牛乳と猫スーツ。
ふわりと優華の髪からシャンプーの香りがした。
蓮が女のときに香る落ち着く香りとは違い、彩華と優華からは優しい香りがする。
薬のせいか、優華の優しい香りのせいかはわからないが、だんだんと直樹のまぶたが閉じていく。
「(急に眠気が…。)」
「あらあら、おねむかな?いいよ、眠りましょうね〜。」
優しく直樹の頭を撫でてあげる。
「(ダメ…だ…。限界。)」
優華に撫でられて、直樹のまぶたは完全に閉じ、ゆっくりと眠りに落ちた。
………………………。
………………。
………。
雨。雨が降っていた。いつかは分からない、ただ幼稚園の頃だと言うことは分かる。
どこかの公園で、小さい頃の直樹が傘も差さずに立っていた。
目の前には、可愛らしい傘を持った女の子がいた。いつか見たイメージと同じように、その女の子はピンぼけしたように顔が見えなかった。
雨でよく分からないが、おそらく直樹は泣いていた。
何を話していたかは分からない。しかし悲しい事だったのだろう。
女の子は話し終えた後、小指を立てて直樹に近づける。そして2人は指切りをした。
そこでプツッと記憶が途切れる。