牛乳と猫スーツ。
「キミも大人になったらわかるさ。」
「ふ〜ん。」
「それじゃ、私は帰るから、あまり女の子のスカートの中を覗くんじゃないよ。」
そう言って、沙織は寮の方へ歩いていった。
直樹はなんとなく沙織の背中を見つめていて、見えなくなると、どこかへ向かって歩き出した。
そんな直樹を屋上から双眼鏡で見る者がいた。
「あちゃぁ…。減量薬と間違えてしまった…。しかし、これはこれで良いデータが取れるわね。」
ノートパソコンに打ち込みながら知佳が呟く。
「さて、追跡しないと――――あれ?」
ある人物を見つけて、知佳の動きが止まる。
「どうして…?」
………………………。
……………。
……。
【校舎裏】
ポツッと直樹の頬に雨粒が落ちる。
「あめ…。」
徐々に雨脚が強くなっていく。
「あめ、嫌い…。」
記憶は無いが、心のどこかに刻まれた思い出から出た言葉だった。
校舎の壁にもたれながら、その場にうずくまる。
「嫌いだ……。」
顔を伏せて呟く直樹。
「雨の日のかくれんぼが好きだな、直樹…。」
その言葉と同時に、今さっきまで体を打ち付けていた雨が止む。
直樹が顔を上げると、傘を差した銀色の長髪の蓮が立っていた。
「おねーちゃん、ケガしてる…。」
「転んだんだ。」
姿を見ただけでも、転んだだけでできるケガではないことはわかる。