牛乳と猫スーツ。
着ている黒いスーツは男物のようで、ブカブカな状態だ。しかも所々破けていたり、体には切り傷、手首には鎖ような跡があった。
「ドジなんだね、おねーちゃ―――」
直樹が言い終わる前に、蓮が直樹を抱きしめる。
「おねーちゃん…どうして泣いてるの?」
「ああ……どうしてだろうな…。」
涙声で蓮が言う。
「さあ、行こう。」
涙を拭い、深呼吸して直樹の手を握る。
直樹は小さく頷いて、蓮の手を握り返した。
「蓮。」
後ろから名前を呼ばれる。
「ちぃ…捜す手間が省けたよ。直樹を元に戻してくれ。」
振り返らずに蓮が言う。
「薬を使ったのね、これで3回目…。あれは劇薬だって言ってるでしょ!!」
「拘束されちゃってね、逃げるのにはこの体にならないといけなかったんだよ。」
自分の手首を見ながら話す蓮。
「それより早く直樹を戻してくれないか?」
疲れたような笑みを浮かべながら蓮が言った。
「…………。」
知佳は何も言わずに、懐から小さな試験管に入った薬を出し、直樹に飲ませる。
薬を飲んだ直樹はすぐに眠ってしまい、知佳が抱き上げる。
「直樹はちぃが連れて行くよ。」
「ああ……後は…任せ……る…。」
傘を落とし、左手で胸を掴みながら、蓮がその場にうずくまる。
銀色の髪が徐々に短くなっていき、体は大きくなっていく。