牛乳と猫スーツ。
「はぁ…はぁ……。」
さっきまでブカブカだったスーツがピッタリになっている。
「猫スーツが故障したの?」
蓮の方を見ずに知佳が言った。
「ああ…データに異常が出てな、機能が停止した。」
フラつきながらも、蓮が立ち上がる。
「そう…なら、ちぃのせいね。猫スーツが故障しなければ、薬を飲む必要がなかったのに…。」
「いいさ、おかげで懐かしい思いができた。」
傘を拾い上げて、髪をかき上げる蓮。
「初めて、あなたの泣くとこ見たよ。」
「昔を…思い出した。」
「この直樹を見ても、彩華と優華は気がつかなかったよ…。」
「13年も前の事だ、無理もない。気づかないまま、2人は直樹を気に入ってしまった。」
「2人?」
驚いたように振り返る知佳。
「心のどこかで覚えてたんだろうな…。」
「2人って…彩華だけじゃないの?」
「もう1人は気づいてないだけだ。あの子は自分だけを見てくれないと嫌なんだよ、姉を守るフリして嫉妬の怒りをぶつけてる。」
笑いながら蓮が言った。
「なんか直樹の未来が不安ね…ドロドロの三角関係になりそう。」
「あの子が自分の気持ちに気づけばの話だ。」
蓮が振り返って歩き出す。