ヒーロー
結局事件の話はほとんどしなかったけど。
ケントは、やっぱり強くて、真っ直ぐで、素直で、優しくて、
出会った頃と変わらない、
僕の友達のケントだった。
それが分かったから、それで良かった。
ケントはこれから大変かもしれないけど、
ケントなら大丈夫。
そう思えたから、それで良かった。
そう、ケントはやっぱり、
僕のヒーローだ。
冷たい風が吹き付ける中、
僕は歩く。
家にではなく、最寄りのコンビニへ。
だって、姉に頼まれたジャンプを、まだ買ってないから。
「あっ、原付置いてきちゃった」
まァ、いいか。
美しすぎる秋の夜空が、僕の歩く道を優しく照らす。
僕のヒーローは、たとえ真っ暗な道でも、やっぱり真っ直ぐ進んで行くと思うケド。
いつにも増して明るく光る月明かりが、
ケントの道も、明るく照らしてくれますように。
そう願いながら空を見上げると、
流れ星がひとすじ、ひゅうと空を横切って、夜闇に消えた。
fin.