ヒーロー
帰宅後、僕はケントの家に電話をかけた。



数回コールが鳴らされて、ケントの母さんが出たようだった。



ケントの母さんには、よくケントと一緒に昇段試験に送ってもらった。試合も応援に来てくれたし、色々とお世話になった。



心配で電話した、と告げると、ケントの母さんは複雑そうに「わざわざありがとう」と、お礼を寄越した。



ケントの母さんの話によれば、ケントは隣町で飲んだ帰り、大学生とケンカをしたらしい。



相手は素人、ケントはあの体格の上に柔道の有段者だ。柔道に打撃はないけど、殴ったら相手は一発でのびてしまった。



そこを運悪く、と言ったら言葉は悪いが、警察に見つかり、連行されてしまった、とのことだった。



相手方とは示談になったけど、警察沙汰にはなってしまったし、殴られた大学生は重症。



ケントの通う大学側の対応はまだ分からないが、場合によっては退学もあり得る、と聞いた。







まるで別世界の出来事のように、現実感のない話だった。
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