なにもないこいものがたり


「じゃあ、じぃやさん。学校行ってくるんで後宜しくお願いします」

「はい、榛も学校頑張って」


ニコッと笑って俺の頭を撫でてくれた。
じぃやさんはいつもこうやって送り出してくれる。

ここの人達は、本当の家族みたいに仲がいい
だから働き甲斐もあるって感じだ。

「これ、今日のお弁当です」

そう言って渡してくれたのは、黒色の袋に入ったお弁当


「松谷が、理苑たちのと一緒に作ってましたよ」

「え、」

「榛は、いつも食堂で食べてるだろうからって。」


さっきも軽く説明はしたが、松谷さんはここのコック長だ。
料理は、本当に美味しくて一度食べたら虜になる
ただ、ちょっと顔が厳ついのもあって誤解されやすいが、枯れそうになってるお花に水を上げたり、捨てられた子犬達をこっそり拾ってきて育てたり…。
心優しい人だ。


「帰ってきたら俺からもお礼言いますが、松谷さんに伝えといて頂けますか?」

「‥はい。きっと喜びますよ」


お弁当を受け取り、ソッと持った

「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


じぃやさんに頭を下げ、重たいドアを押して外にでた



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