なにもないこいものがたり
「お待ちー!」
ガチャッ、と扉が開いて優とお嬢様が顔を出した
「榛はコーヒー牛乳、恵の牛乳ね」
「奢り?優の太っ腹ー!」
恵都が受け取ろうとしたら、牛乳のパックはもう少しのところで恵都の掌に入らなかった
「おい、優!」
「奢りな訳がないでしょー!歩と榛ならまだしも、恵には奢んないわよ!てゆーか彼氏の恵が普通奢るもんでしょ!」
「はあ?それが毎日毎日、お前のセクハラと浮気を見てみぬふりしてやってる俺に言うセリフかよ!」
ギャーギャー痴話喧嘩始める二人を放っといて‥。
「歩、おいで」
優の隣でオロオロしてた歩を隣に呼んだら、表情が明るくなってトコトコやって来たかと思うと隣に腰を下ろした
やべー、何だお前は、犬か!
ニヤニヤしそうな顔を必死に見られないように隠した
「優さんと恵都さんは喧嘩ばかりですね」
「あれで、仲良いんだよ」
優から貰ったコーヒー牛乳にストローを差して、お嬢様の手元を見るといちごの絵が書いてあるパッケージの"いちごみるく"が握られていた。