なにもないこいものがたり


「‥いつもみたいに一緒に食べては下さらないのですか?」

食べていた手を止め、俺達に向かって首を傾げるお嬢様
そんなお嬢様を見て、顔を見合せる俺とじいやさん


「今日も松谷さん(※山科家、コック長)のホットケーキは美味しいですよ。」

そう言ってニコンと笑うその笑顔にキュンとしたのはここだけの秘密で。


「‥ですが。」

ちらっとじいやさんの顔を見ると、涙をポタポタ流して泣いていた


「‥お嬢様、じぃやは‥じぃやは!」

泣きながら(号泣)お嬢様の手を握るじぃやさん
これも、毎度のこと。

「だって、折角なのですから。やはりご一緒した方が美味しいものも美味しいですよ」

「‥お嬢様ぁああああ」


「‥何のドラマだ」

二人に聞こえないように呟いて
一緒に食べる準備をした
多分、今日も一緒に食べることになりそうだから…


お嬢様は、こうやってよく使用人の俺達と一緒に飯を食べようと言ってくる。

"美味しいものは皆で分かち合って食べると倍美味しくなる"

と、言ったところか
まあ、お嬢様の良いとこ
その1って感じだろうか‥



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