なにもないこいものがたり


‥ああ、
俺は本当にイカれてる


「ごめんな、歩」


くしゃっと頭を撫でると、少し遠慮気味に微笑んだ。


その顔に、いや 口に
キスをしてやりたいと何度思ったことか


分からない。だけど


「ありがとう、サナ」


このお嬢様が俺をこう呼んでくれること
笑って抱き付きにきてくれること


それを独り占めしたい。
うん、さっきも言ったか。


そんな欲望だけが、毎日増えていく


ヤバい、今の俺
ちょー幸せ



「一緒に連れてってくれますよね?」




「それとこれとは別ですネ」





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