私の彼氏

5

翌日、授業が終わると同時に、生徒の山崎が真由美のもとに駆け寄った。

山崎は『カワイサツキ』の携帯小説を真由美に紹介した女生徒である。

「感想ノートのまゆみんは、先生でしょうか?」

と聞いてきた。

山崎はニヤニヤしている。三十を超えて『まゆみん』なる名前を使っているのが、可笑しいのであろう。

しまった。山崎も読んでいることをすっかり忘れていた。これは、恥ずかしい。やってもた。

「はい」

と赤面になりながらも答えた。

「まゆみんは本当にあのバーに行きたいのですか?」

「はい。あのバーにいきたいです……って、誰がまゆみんやねん!」

山崎は引いた。また、やってしまった。素人がノリツッコミをやるべきではないのだ。

話題をかえよう。

夫があのバーにいたという話をしてやろう。そうだ、せっかく世紀の大発見をしたのだから、誰かに話すべきなのだ。

しかも、この発見は山崎生徒のおかげでできたのだ。

彼女に話そう。


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