晴れた午後、公園のベンチで【短編】
少しためらって、私はそれを拾い上げる。
そして立ち上がり、斜め前のベンチの前まで近寄る。
そこは、私のエリアではない。
なんだか申し訳ない気分になった。
「どうぞ。」
お爺さんはゆったりと微笑むと、軽く会釈した。
「どうもありがとう。」
初めて聞いたお爺さんの声。
落ち着いていて、優しく響く
紳士的な声だった。
私は、なぜか
もっと話してみたいと思った。
「いつも、ここにいらっしゃいますね。」
お爺さんは優しく微笑んで、えぇ、と短く答えた。