晴れた午後、公園のベンチで【短編】
「けど、毎日が単調で嫌にもなります。」
私は
初めて話したばかりの老人に何を言ってるのだろう。
だけど、
サエキさんなら聞いてくれる気がした。
サエキさんを見ると、
そのふんわりした笑みのまま
私を見ていた。
「変わらないことはいいことです。変化することは、とても寂しい。」
わずかに切なそうな色を隠し、サエキさんは言った。
変化は寂しい?
「サエキさんは、奥様の具合が良くなったらいいなとか、思わないんですか?」
サエキさんは少しだけ考えた。
「家内が元気になれば、確かに素敵かもしれないね。
だけど、今、僕と家内がただ一緒に居るという事実が
……幸せなんですよ。」
そしてまたサエキさんは優しく笑う。
あぁ、この人は本当に幸せなんだ。