†不思議の童話館†
「何だか、私一人で話してるみたい。皆、私のお話を聴くだけじゃ、つまらないでしょう?」
少女はうつ向き、上目使いで男女を見る。
すると、その場にいた男女は、きょとんとした表情で、それぞれ顔を見合わせ、くすりと笑った。



「そんな事はない、アリス。僕達は、お前の話が好きだ」
銀髪に色とりどりの宝石を散りばめたティアラを付けた、桃色のドレス姿の美しい少女が言う。
「本当?クイーン」
「あぁ、本当だ。なぁ、チェシャよ」
銀髪の少女は、柔らかく微笑むと、隣に座っていた紫色の猫の耳が頭から生えている少年に目を向けた。少年は、膝に乗せていた黒猫を撫でながら顔を上げ、頷いた。
「うん。俺、アリスの話好き。もっと話して。ダイナも、アリスの話好きだって」
猫耳少年の膝に座っていた黒猫が、それに答える様に「ニャー」と鳴いた。



「そうかしら。皆がそう言うなら、もっとたくさん、お話するわ」
少女はクスクスと笑うと、男女を見回して言った。
「ねぇ、皆。皆はこれからもずっと、私のお話聞いてくれる?」
少女の問いかけに、男女は一様に頷いた。
「もちろん」
「もちろんだとも」
「僕もです」
それを聞いた少女は、ほっとした様に笑った。
「ありがとう」
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