人の恋人は蜜の味。ーa traitor ー
2
4ヶ月前。
まだ桜の花びらが綺麗に舞い降りていた
高3になりたての頃。
「真琴って、ぜーったいモテるでしょ?」
休み時間。
いきなり声が飛んできた
斜め後ろの席を振り返り、私は笑顔で答えた。
「モテないよ~。美沙の方が絶対モテるでしょ?」
小学生みたいな
馬鹿みたいな会話に
私が心底呆れている事なんかに気付くハズもなく
野口美沙は楽しそうに会話を続けた。
「え~、美沙モテないから~!…あー、でもね……」
「何?」
「ん~…やっぱり内緒~!」
美沙のわずかながら
桜色に染まる頬が
私の興味を誘った。
「美沙言ってよ。私達友達じゃん。何でも言い合えるのが友達でしょ?」
少し台詞がクサすぎたかと焦ったが、
そんな不安もよそに
美沙はペラペラとひとりでに喋り始めた。
「そうだよね?じゃあ、真琴だけに言うけどー…A組の落合って分かる?」
落合。
すぐに分かった。
落合は一年の頃から
何度も告白されているけど
全く誰とも付き合わないという噂をよく聞いていた。
「分かるけど?」
美沙は私にグイッと近寄り
小さな声で囁いた。
「……昨日ね?…落合に…告白されたの。」
美沙は続けた。
「それで…OKする事にしたんだ。」
さっきとは比べ物にならない位
分かりやすく桜色に染まる美沙の頬。
「そうなの~!おめでとう!」
ニッコリ笑うと
美沙は気を良くしたのか更に続ける。
「美沙ずーっと好きだったの。だから、めっちゃ嬉しくて♪」
「そっか~!美沙幸せそうだね~!」
…美沙…幸せそうだね。
…今だけは。