世界の果てまでキミと一緒に。
案の定、水族館の中は家族連れが多くて賑やか。
そんな中、スーツを着た男と普段着とは違うワンピースを着た女がいて……。
まるで友達の結婚式の帰りに、恋人のいない男女が意気投合した勢いで水族館に来た感じだ。
それだけ浮いて見える私たちは、当然、周りからも注目の的で……。
水族館を入って、すぐのメインの水槽の前に並んで立つと、その周り半径3メートル以内には誰もいない状態。
「わぁ!」と子供のように歓声を上げ、水槽を見る私と、眉間にシワを寄せ、腕を組み、無言で水槽を見る千尋様。
対照的な2人が一緒にいることが珍しいのか、遠目で見る人たち。
「ママ~!このオジちゃん、こわーい!」と千尋様を見て、怖いもの知らずの無邪気な子供。
「こら!そんなこと言わないの!」と叱る母親。
そんな子供と母親に千尋様は、こめかみをピクっと動かし睨みつける。
しばらく固まったままの子供は、そのあと号泣。
母親は千尋様に頭を下げて謝り、子供を抱えるようにして逃げていく姿は、まるで漫画を見ているようだった。