世界の果てまでキミと一緒に。
「そんな事、言うんじゃない!お前に死なれたら俺が困るんだ」
千尋様の目にも涙が溜まってる。
千尋様と藤堂さんの間には、見えない何かで繋がっているんだ。
お互いがお互いを信頼し合ってる。
「さっ、社長、こんなことしている場合じゃありません。桜子さんを連れて早く……」
「わかったよ。お前の頑固さには負けたよ」
千尋様は力なく笑った。
「頑固は生まれつきです」
藤堂さんも力なく笑う。
「桜子、立てるか?」
私がコクンと頷くと、千尋様は私の体を支えるように立ちあがった。
「藤堂、これだけは約束してくれ。何かあったら必ず逃げろ。いいな」
「私は大丈夫です」
藤堂さんはそう言って、涙を流しながら笑顔を見せた。
「桜子、行こうか」
千尋様がスーツケースとボストンバッグを持つと、私の体を支えるように階段に向かって、ゆっくりと歩き出した。
「お気を付けて」
後ろから藤堂さんの声が聞こえ、歩きながら振り向くと、藤堂さんは笑顔で手を振っていた。
そして、千尋様と私は逃げるように家を後にした……。