世界の果てまでキミと一緒に。
もう、帰ろうかな……。
そう思っていた時、ワンワンと犬の鳴き声が聞こえ、上品な女性が可愛い小型犬を連れて角を曲がって来て私の前を通りすぎた。
人がいなかった住宅街に人がいた。
それだけでも安心と言うか、嬉しかった。
そうだっ!
あの人に聞いたらわかるかも……。
これはチャンスだ。
これを逃してはいけない。
「あのっ!すいません!」
後ろから女性に声をかけた。
振り向いた女性は、私のお母さんくらいかな。
見るからにお金持ちそうなオーラが出ていて、とても上品な女性は私を不思議そうに見ていた。
「あ、あの、この住所のお家を探してるんですが、ご存知ありませんか?」
私は女性に近付き、住所が書かれた紙を見せた。
その紙を見る女性。
「あぁ!このお宅なら、そこの角を曲がった突き当たりですよ」
「ありがとうございます!」
「いえ、では失礼します」
女性は会釈をすると、私に背を向け、犬の散歩を再開した。
私は女性に教えられた通りに角を曲がり、そのまま突き当たりまで歩いて行く。
「ここ?」
洋風のお家が目の前に現れた。
「す、凄い……」
この住宅街の中で1番大きな家かもしれない。
煉瓦の外壁がどこまでも続いている。
中の様子はわからない。
この門の中の家は、どんな風なんだろう。
私は門のところにあった呼び鈴を押した。