世界の果てまでキミと一緒に。
「あの、桜子様はやめてください」
私の名前を知ってるってことは、彼にいろいろ聞いたんだろう。
だから自己紹介をするのをやめた。
「いえ、そう言うわけにはいきません。私のことは綾乃と呼んでください」
そう言うわけにはいかないんだから、何を言っても無駄なんだろう。
桜子様だなんて、この家のお嬢様でも奥様でもないのに……。
売られた女の私に桜子様なんて、可笑しくて笑いそうになる。
「シャワーを浴びて来てください。その間にベッドのシーツを交換して、お食事の用意をしておきます。お洋服も用意しておきますね。バスルームは、あの扉の奥です」
彼女はそう言って、ベッドが置いてある側の壁から対面にあるドアを指差した。
私は気だるい体を起こす。
「あの……」
「はい」
「彼は一体、どういう人なんですか?」
彼は私を知っている。
でも私は彼を知らない。
だから思いきって彼のことを聞いてみた。