世界の果てまでキミと一緒に。
俺は桜子に本当の事を言う事が出来なかった。
それを知ったら桜子が悲しむと思ったから。
それは俺にとって初めて人に見せるほんの少しの優しさだった。
紙を見て行くうちに、ある疑問が頭を過った。
なぜ、桜子は生まれてすぐ養護施設ではなく水瀬夫婦に預けられたんだ?
お腹を痛めて生んだ子供を簡単に手放すことが出来るんだろうか……。
それに実母の行方もわかっていないことも不思議だ。
ベッドに放り投げてあった携帯を持ち、藤堂に電話をした。
「俺だ。藤堂に頼みがある。桜子のことを、もっと詳しく調べてくれないか?いつでもいい。藤堂の手の空いてる時に。じゃ、頼んだぞ」
携帯を切り、枕元に置くと、横に向けていた体を上に向けた。
そして、静かに瞼を閉じた……。
―千尋Side end―