世界の果てまでキミと一緒に。
ー千尋Sideー
「そうか?別に変ったとは思わないが……」
藤堂のさっきの質問にそう答えた。
「いいえ、社長は変わられました。こうしてお茶を飲んだり、花を見たり……。それに桜子さんを部屋の外に出したそうじゃないですか」
「まぁ、それは部屋の中に閉じ込めておくのも可哀想だと思ったから……」
「女性に対して今まで可哀想なんて言葉を使ったことなかったのに……。桜子さんは社長にとって特別な女性なんですよ。社長と長く一緒にいる身としては社長の変化に気付かないわけないです」
特別な女性……。
藤堂の言葉が胸を突き刺す。
俺は肯定も否定も出来なかった。
「社長、明日は仕事がお休みです。桜子さんと1泊でお出かけになられたらどうですか?」
「1泊で出かける?」
女と泊まりでどこかに行くとか面倒臭いと思っていたが、藤堂にそう言われて、それも悪くないと思う自分がいた。
「いつものホテルに電話しておきます。お食事はイタリアンなんでどうでしょう?レストランも予約しておきます。それから桜子さんの用意もしなくてはいけないので、私から綾乃には言っておきます」
「あぁ、藤堂に任せるよ」
忙しくて、いつも時間の感覚がなく、時計を見ることも滅多にしない俺が、仕事をしていても時間ばかり気にして、考えることは桜子のことばかりだった。